空蝉の現身

この時期は昔から好きではない。

 

寒い冬から暖かい春になり毎年体調を崩すからではなく、出会いと別れが強制的に起こるから。

 

自分は変化することに躊躇いをもつ、躊躇する。

もちろん良い方向への変化であるならば喜んで受け入れるが、良くないであろう変化に関しては受け入れたくない。

きっとこれは誰もがそうだとは思う。

 

今まで積み上げてきた関係が強制的に変えられてしまいまた1から関係を構築する。

それが何度も何度も繰り返すことに嫌気がさしている。

たかだか20数年間の人生だが、この繰り返しは多くなんの意味があるのかわからなくなり、新しく関係を構築したくなくなる。

正しくは、"積み上げてきたものが一瞬で崩されてしまうから新しく関係を構築するのが億劫"という感覚なのだろう。

 

今年もそんな時期がきた。

新年度が近づき人事異動が発表され、愕然とした。入職する前からお世話になっていた上司が約20年目にして初の異動。

誰もが予想しない出来事だったから戸惑いというか実感がまるでない。本人もまったくない様子。

今の自分がいるのはこの人のおかげであり個人的に思い入れが強すぎて認めたくない一心があった。

最後のあいさつを聞いて課員でご飯食べいって別れた後にも実感はなかったけど、普段言われないような言葉を投げかけられたことを思い出すとなんだか胸が篤くなって帰宅してから泣いてしまった。

去年までは「また来週からもよろしくね」と話をしていたのに、その来週にはその人はいない。そこには知らない違う人がいる。

 

人との出会いや別れを繰り返す仕事をしているからある程度慣れたと思ってはいたけど、それは気の所為だったようだ。

上司からもらった言葉を胸に前向きに頑張っていこうとは思ってる。そうなろうとも思ってる。

でもやっぱり変化したくないという気持ちがどうしても勝ってしまう。

 

いくつになっても人との別れは寂しい。

だからこの季節は好きではない。

少し引きずるだろうが、少しずつ前を向いていければいいな。